溜息の沼

愚考

変身

昔の小説です。フランツ・カフカという方はこんなタイトルの本を書いています。

朝目覚めると男は大きな虫に変身していたのです。

家族に嫌われながらも生活していきますが、最後は殺される。それだけのお話。

 

僕は今日変身しました。自分が変われたと確信したのです。

 

そうです、腕時計を買ったのです。

 

事の起こりは今日のコストコにおでかけしたところから始まります。

 

皆の予定を合わせ、いつも通りコストコへ。今回は大きな収穫はありませんでしたが美味しいものを買っただけです。

さて、ここから隣のアウトレットモールに行ったときでした。

最近服を買ったばかりということもあり、僕はダラダラ周りについていくだけでした。が、そこでSEIKOが目に入ったのです。

去年、僕はここで今回と同じ苦しみを味わったことを思い出したのです。

 

「腕時計がほしい」

 

あの時の僕は迷いながらも、諦めました。当時はお金に余裕がなかったのです。

しかし今回は違いました、お金があったのです。

この埼玉のアウトレットという最終在庫流刑地で僕は買ってしまったのです。

後悔はしていません。しかし、僕の心には大きな穴ができてしまいました。

 

「他人の腕時計に憧れる僕はもういない」

僕は自ら変わることを望んだのに、そこには達成感や幸福感よりも喪失感しかなかったのです。

こうした小さな変化を積み重ねて行った先、未来の僕はもう今の僕ではないのです。

細胞も入れ替わり、もはや自分を証明できることさえできません。詰みました、自分に対して詰みました。もはや言い残すことはありません。明日の朝の僕はもう別人です、眠りに落ちたら僕とお別れなんです。

朝起きて、目が覚めた時の僕は変身した後です。虫になっているでしょうか?それとも僕を語る僕でしょうか?

もはや寝ることすら恐ろしい。

 

そんな僕はこう思うのです。

 

 

「いい買い物したぜ!!!!!!」

後のことは明日の僕に任せます。

 

それでは