溜息の沼

愚考

スタジオジブリ新作「君たちはどう生きるか」ネタバレ感想

事前情報まったくなし、本当に本当に楽しみだった。
初日ということでさっそく観てきたので、色々思ったことを書こうと思う。

先に言っておくと、ネタバレなんか無い。
そもそも、ネタバレするような内容がない。
予告編が公開されないのは、予告編を作ると中身が透けて見えてしまうからだと思った。
(エンドロールに「予告編集」とあったので、多分予告編は存在してるのだろう。落ち着いた頃に公開されるのかな?)

・ざっくりストーリー解説
 戦中の日本、母が戦火に巻き込まれて亡くなったところから話が始まる。
 父は、その亡くなった母の妹と再婚。
 出産のため、彼女たちの実家へ。
 出産を前に突然姿を消した継母(先述の通り、実母の妹)を探しに、実母の居場所を知るという青鷺の化け物(キービジュアルのあいつ)に導かれ、そして始まる異世界珍道中。
              ・・・的な感じ。

登場人物は全員人間味に溢れ、卑しい所もあれば悪意も持つ。でも大切な人は大切だし、そのためになんとかしたいという気持ちもある。

・感想
 ただただ綺麗なアニメーションで、パヤオが好きな(フェチズムといってもいい)ものをひたすら描かれた作品だった。ある種の芸術作品といってもいい。
歴代ジブリのセルフオマージュも散見されるが、もしかしたらこれはセルフオマージュなどではなく、ほぼパヤオの好きなものを詰め込んだら同じようなものができてしまったという、ただそれだけなのかもしれない。
 昔から見てきたジブリの「なんかここの風景いいよね」「この食べ物美味しそうだよね」「あの不思議な物体が印象に残ってて」・・そんな映像がずっと続く。
先述したようなストーリーですが、マジで有って無いようなもの。たぶんこの作品にストーリーだの起承転結はいらなくて「綺麗なものを見て綺麗だと言え」というメッセージすら感じた。だらだら取り繕ったような言葉なんぞ要らないんだなという云々………。
とりあえず、今回は「異様さ」がやけにこだわって演出されているなというのは理解できた。(異様なほどに…)


・一応、世界観を補完するためのメモ(妄想)
 ※見た人向け

①主人公、眞人の大祖父。彼が宇宙から飛来した石(宇宙の意思・石)と邂逅。魅入られ、石(意思)と契約し新たな世界を創造する。(作中では地獄と表現される。死者が偏在しており、あらたに現実に生まれ変わる魂の赤子のような存在もいる。なお生者も当たり前のようにいる。なんでもあり)

②この世界では大祖父が持ち込んだ鳥類(ペリカン・インコ)が進化し勢力を持つ。こいつらは話を進める舞台装置みたいなものなのでそんなに気にしなくていい。

③この世界を保つために、大祖父は「石の積み木(それはもう積み石なんよ)」を積んで世界を維持する役割に就いている。後継者として、子孫である主人公・眞人に継いでもらいたいと思っていたが、思い改め「こんな世界いらねーわな!みんな元居た世界と時間にお帰りなさいや!」と世界をぶん投げる。世界消失。生まれ変わりと死者の魂は、また新しいシステムが作られるのかもしれないね。めぐるめぐるよ時代は巡る、知らんけど。
 →世界の主が望む世界を作ることができる。
  美しい生々流転の世界にするか、それこそ地獄にするか。石(意思)をもって世界を積むのだ。
  (ダークソウルの玉座みたいだね)

④主人公、ガキなりに打算的で悪意持ち。
 自分のプライドと言い訳を保つために、自分で怪我をすることで親父の庇護を引き出した。本当にクソガキ…って感じ。でもまぁ、自分が子供の時も、そういう打算的なムーブしたよね?ってことで。人間ってそんなものよねっていう教え。

⑤この映画を見て「よく分からなかったね」というのが正常。筋の通った設定だのお話になんて意味なんてねぇ、綺麗なものを綺麗に描き出すそれがアニメーションや!とでも言いたいのだろうか?むしろ、そういうことを感じて見ること自体がもうナンセンスなのかもしれない。


・まとめ
 タイトルの「君たちはどう生きるか」とはなんだったのか?それだけが分からない。
 作品に込められた説教臭い含蓄は無い。
 「この作品を見て、お前らは何を感じて、どう生きていくんだ?」とかメッセージ性が……なんて考えて鑑賞に臨んだが、なんの意味もなかった。
ありきたりな解釈をするなら「君、自分が生きているこの世界で、どんな決意と意志(石)を持って世界を生きて、紡いでいくんだい?」みたいな事なんだろうが、ナンセンスなのでここではあえてつまらん解釈はしない事とする。
旅行にいって、荘厳な風景を見て「うぉースゲー!」つって帰るみたいな、そういう楽しみ方をするのが正しい映画なんだろうなと思い至ったところで今回は終わりにします。





過去作の面影が垣間見える演出、ファン的にはあれだけでいいまである。